有料老人ホーム、「入居一時金の初期償却」には注意。
たとえば1年後に有料老人ホームを中途退去するような場合、「入居一時金」が最終的にいくら返還されるのかは、基本的にはそれぞれの「有料老人ホーム」が定める返還金の計算方法にもとづいて、決められることになります。
したがって、まず入居契約前に「重要事項説明書」をよく読んで、その返還金の計算方法を確認する必要があります。
とりわけ、「初期償却」の額、そして「償却方法・償却期間」がどうなっているのか、に注意する必要があります。
老人ホーム側が入居一時金を求めることそのものに法的な問題は無く、またどのように償却するかについても、(よほど公序良俗に違反するような場合を除いて)老人ホーム側のルール設定に委ねられているからです。
「初期償却」とは、その施設への入居した最初の段階で、いわば有無をいわさずに施設側にとられてしまう金額です。
有料老人ホームの広告を見ると、重要事項欄に「初期(一時)償却:20%」などと書かれた部分がありますが、この初期償却の金額(初期償却率(%))が少なければ少ないほど、戻ってくる金額が大きいということになります。
初期償却率は、ホームによって15%程度から100%(!)まで様々ですが、入居一時金の金額そのものが施設によって幅が大きいので、%の大小だけで見ずに「結局、初期償却の分を差引くと実額でいくら残るのか」に、注目するほうがよいでしょう。
この初期償却の金額分を入居一時金から差し引いた「残りの金額」が、ホームの定める償却期間と償却方法に応じ、償却されていくことになるわけです。
したがって、償却期間の年数が長いほど、いざ中途で退去となった場合には還ってくる金額が大きいことになります。
ちなみに償却年数も、ホームによって、0年(初期償却率100%の施設の場合)から15年程度までと、様々となっています。
償却期間を過ぎた後の退去なら施設の定める一定金額を返還すると定めている施設もあれば、計算上返還すべきお金が残っていたとしても残りは一切返却しない、と定めている施設もあります。
償却方法もその有料老人ホームが定めるところによりますが、基本的には一定割合ずつ償却していく「定額法」か、初期償却の金額割合が大きい「定率法」のどちらかを、計算方式に採用しているはずです。
「定率法」を採用している場合は、中途退去の時、初期償却として施設側が取る分がそれだけ多くなるということを意味します。
これはある意味、入居者よりも経営優先、利益重視の運営姿勢ということですから、入居希望者にとっては選考上のマイナス評価となりますね。
入居者にとっては、入居一時金の初期償却の金額が低めに設定され、入居者の持分となる金額がなだらかに減っていくかたちの、「定額法」による償却のほうが望ましいといえるでしょう。
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