介護付老人ホーム、職員・スタッフの「質」をどう調べるか。
国家資格である「介護福祉士」の保有者は、一般に待遇面が比較的よいとされる特養や大手の有料老人ホームに就職先を求める傾向があり、新しい老人ホームはその採用確保にずいぶん苦労しているようです。
その一方、「ヘルパー」の資格は一定時間の講習を受けることで取得できるため、現場での介護経験は乏しいと言わざるを得ないのですが、人材難からスタッフのほとんどがヘルパーでしかもパートタイマー…という施設も多くあるのが、現状です。
賃金水準も高く介護業界の人材不足が深刻とされる大都市地域の施設ほど、スタッフの質に問題を抱えるケースがむしろ多くなっている、ともささやかれています。
たとえ大手業者であっても、介護スタッフの確保と教育にはどこも非常に苦労しているのが現実です。
そもそも人生経験の豊かな高齢者に対して、社会経験の浅い若者が身の回りのお世話をする…という構図なわけですから、入居者の求めや抱える悩みを先回りして行動できる人材がはじめからたくさん揃っていることを期待するほうに無理がある、とも言えるかもしれません。
また、介護業界の職員・スタッフの年収水準も、激務ともいえる労働環境に比して250~400万円程度に止まっており、加えて年齢や経験を重ねてたとしても収入が増加する保証もなく、結局疲れ果てて他業界に転職したり、あるいは有資格者であっても業界で働こうとしない若者が非常に多くいるのが、残念ながら現状となっています。
(これについては、姉妹サイト内記事介護報酬の改定が、介護施設の利用者にもたらす影響。をあわせてお読みください。)
しかしその一方で、介護業界の現場で働くことに使命感と社会的な意義を見出し、厳しい労働環境・条件の中で献身的な姿勢で働くスタッフがいることもまた事実です。
良い人材に長く働いてもらうことで、最終的に入居者へのサービスの質をあげていこうとする介護付老人ホームは、一般に人材教育・研修に資金を投下できる、経営面での余力のある大手企業系列下にあるようです
(ただしこれは、「大手企業傘下の老人ホームであるならば優良」ということを、決して意味するものではありませんが)。
そしてそのような有料老人ホームは、やはり入居一時金や月額利用料の水準がそれなりに高く設定されているものです。
したがって利用者サイドとしては、当然ならが資金計画との兼ね合いを考えながら、「施設職員・スタッフの配置状況・資格の内訳・介護経験の度合い」などについて、重要事項説明書のチェックはもとより、施設見学時におけるスタッフの動作やサービスを受けている入居者の表情などを観察し、さまざまな角度からよく調べて、予算の許す範囲で最善の選択が行えるように努めたいものです。
たとえば、「経験の浅いスタッフが目につくから即ダメ」ということではなく、その分を他のベテランスタッフなど施設全体でカバーする体制がとられているか、あるいは定期的なスタッフミーティングによってスタッフの間でノウハウや情報を共有しようとする体制ができているかどうか、などの点も踏まえて、いろいろな角度から総合的に見ていくのがよいでしょう。
高額な介護付老人ホームということだけで、すべからく手厚く質の高いサービスが約束されているわけでもない。
かといって、入居一時金や月額利用料が廉価な施設はすべて安かろう悪かろうということでも、決してないわけです。
その良し悪しを見抜き、予算内で最善の判断が行えるかどうかは、老人ホームの広告や営業マンの言葉をうのみにせず、入居前にどれだけ自分の目できちんと調査を行ったかに大きくかかってくる、と言えそうです。
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